イサム・ノグチの空間

港区と慶應大学がやっているアート・マネジメント講座「イサム・ノグチの空間」を聴きに三田の慶應に行ってきた。
こんなことを港区と慶應がやっているとはまったく知らず、港区の区報「広報 みなと」で知り、イサム・ノグチに興味があったので、参加してみた。
イサム・ノグチについては、恥ずかしながらインテリアの照明<あかりシリーズ>やテーブル、ソファなんかのデザインで知っているだけで、有名なプロダクト・デザイナーの一人だと思っていたが、それは彼の仕事のごく一部で、そんな枠には収まらない芸術家だったらしい。
今日の講座は、庭のアーティストとしてのイサム・ノグチに焦点をあてた講座だった。
(講師は武蔵野美大の新見先生)
イサム・ノグチは、父が日本人の詩人、母はアメリカ人の混血児で、日米の挟間で2つの大戦という激動の時代を生きてきた。これが作品に大きな影響を与えている。
彼がかかえるどの場所にも帰属できない宙吊りの存在が背景にあり、その中にある異文化(東洋と西洋など)を合金し(先生の言葉で)、国家とか、民族とか、所属、所有とか関係なく、だれもが自由に出入りでき、ひとりひとりが受け入れられる空間、それこそがイサム・ノグチの庭だった、という。
何でも彼が計画だけして実現できなかった公園が、その遺志を継いで死後17年たって完成されたという「モエレ沼公園」という所が札幌にあるらしく、次回北海道に旅行に行った時にはぜひ立ち寄ってみたくなった。それに香川県にはイサム・ノグチ庭園美術館があるということで、ここにも行ってみたいし、調べてみると近くにもノグチの作品はいろいろあるみたいなので、機会を見つけて見に行ってみたいと思う。
さて、庭に焦点をあてた講座だったが、慶應には「萬來舎」というイサム・ノグチが彫刻・庭園、谷口吉郎が建築、二人が協力して室内デザイン、という形でつくりあげた談話室(社交場)があったらしい。しかし、オリジナルは新校舎建設に伴ってなくなってしまい、現在は南館に移築・復元されているということで見に行ってみた。
空間という意味では、オリジナルから移築している時点で、作者の想いからはずれてしまっているが、個々の作品という意味では楽しめた。ただ、個々の作品は本来は空間という全体の中で生かされているものであり、その点は残念ですね。
イスやテーブル、暖炉などの曲線、材質は印象的で、異文化合金という感覚は感じることができた。
今日は、秋にふさわしく上質な文化に触れる日になりました。
イサム・ノグチ萬來舎

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